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第72話
第72話
飲んでくださる方に思いやりの気持ちを持つ
原油高騰でバイオ燃料をつくる研究があちこちで行われており、サトウキビやトウモロコシを原料にしたエタノール生成のほか、米のとぎ汁やうどんの茹で汁を燃料にするという実験も行われているようである。
米を精米するときに出る米ぬかには、でんぷんを分解する働きがあり、そこへ酵母を加えると米のとぎ汁がエタノールへと変化する。でんぷんがあればでんぷん分解酵素を使用してアルコールをつくることが出来るという仕組みを利用したものであるが、戦時中の日本は航空燃料に混ぜてアルコールを使っていた。今でいうバイオ燃料であった。
学徒動員で千葉県稲毛にあったアルコール工場に徴用されたとき、私はそこで約1年、アルコールをつくった。飲むためのアルコールではなく軍事用、燃料用アルコールなのだが、原料は砂糖や乾燥芋である。当時貴重でなかなか手に入らない砂糖。これが大量に積み上げられており、袋の封を切って釜の中に投入していく。砂糖が身近にあるお陰で甘い物が欲しいときはいつでも口にすることが出来た。
燃料は私たちの生活に不可欠なものであるが、環境に優しく平和に活用出来るものが開発、実用化されることを願うばかりである。
さて、先月の末のこと、料亭の店主が結成している、或る会にお邪魔させていただいた。「ウイスキーに合う和食のつまみの研究」ということで、献立は真鯛の燻製や冷たいスープ、鮎の詰め物料理や牛のローストなど。20人余りが出席したのだが、料理が全部出た頃にはすっかり出来上がってしまって、これといった結論は出てこなかった。まさに酒飲みたちの笑い話である。とはいえ、美味しく食べて飲んだ、ということで良い研究結果だったのではないか。
私が興味を持ったのは燻製という食材の加工法である。燻製することで保存しやすくなる、という特性の他に独特の香りと旨味が出てくる。低温で長い時間をかけて食材を燻煙する「冷燻」、熱源を使ってやや高めの温度で燻す「温燻」、同じく熱源を使用して燻製器内の温度を高温状態にし、短い時間で食材を燻す「熱燻」などがあり、冷燻では生ハムやスモークサーモン、温燻ではベーコンや魚類、熱燻では肉や鮮魚などの素材が適しているといわれている。
燻製といえば、スコットランドを訪れたとき、よく食べたのがニシンを塩漬けにして燻製にした「キッパードヘリング」である。あちらの伝統的な朝食メニューでパンと一緒に食べるのだが、温燻で燻されているので身がやわらかく美味しかった。ひょっとしたら「キッパードヘリング」もウイスキーに合うのではないだろうか。
ウイスキーの原料である大麦麦芽を乾燥させるときピートを焚く。これが、ウイスキーに独特のスモーキーフレーバーをもたせる。スモーキーフレーバー同士、何でも合うとは一概に言えないが、上手く組み合わせると面白いのではないか。いずれにしても私はウイスキーづくりが専門なので、ウイスキーに合う食べ物については料理人の方にじっくりお話を伺ってみたいと思う。
ちなみに研究会は昼間に行われ、心地よくほろ酔い気分となったが、昼間に飲む酒の方が酔いが早いと言われている。その理由のひとつとして考えられているのが血液循環の違いである。昼間は夜よりも体温が高く、血液循環が活発であり、血液に溶け込んだアルコールが脳に到達して酔いを感じるのが夜に比べて早いのだという。他にも理由があれば知りたいものだが、どなたかご存知の方はいらっしゃるであろうか?
私はウイスキーを飲むとき、水の存在が大切だと思っている。冬の寒いとき、とても冷たい水割りを出されても嬉しくないし、カルキ臭のする水でつくった水割りなど論外である。ウイスキーの提供の仕方は様々であるが、やはり大切なのは、“飲んでくださる方に思いやりの気持ちを持つ”ことである。
以前、知人と話していて『ブラックニッカ クリアブレンド&ウォーター』の話題が出たとき「『ブラックニッカ クリアブレンド』をそのまま水で薄めて缶に詰めたのではなく、水割りにして美味しい状態になるようウイスキーも水も吟味してつくっているのだ」と申し上げたことがあった。
また、「ブラックニッカ クリアブレンド」(現在のブラックニッカ クリア)の水割りをつくるとき、水代わりに『ブラックニッカ クリアブレンド&ウォーター』を使うと、香味豊かな水割りが出来上がる。少々アルコール度数が高めになるが、暑気払いの一杯にお試しいただければ幸いである。