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「春告魚(はるつげうお)」と呼ばれるニシンは、春、産卵のために北海道沿岸に現れます。かつてはニシン漁で財を成した網元たちが競って「ニシン御殿」を建てるほどの豊漁が続きましたが、1955年頃から水揚量が激減。乱獲の影響か、環境変化の影響か、ニシンはぱったりと来なくなり、いつしか「幻の魚」とも呼ばれるようになりました。
しかし、近年になって、余市に近い小樽沿岸では、ニシンの大群が浅瀬に押し寄せ、産卵・放精によって海の色が乳白色になる大規模な「群来(くき)」が確認されています。関係者の方々による稚魚の放流や、小さなニシンは獲らないなどの管理努力により、ようやく回復してきたというわけです。
さて、ニシンは、日本はもとよりヨーロッパなどでも食材として親しまれている魚。スコットランドには「キッパーズ」というニシンの燻製があります。これは、竹鶴政孝も留学時に食べていたというスコットランドの朝食の定番で、広島で育ち、魚好きの彼にとって故郷を思い出すうれしい食べ物でした。
日本では塩焼き、煮つけをはじめ、三平汁、昆布巻、身欠きニシンを使ったメニューなどさまざまな料理があります。ニシンの燻製はウイスキーと合うかもしれません。ニシンとニッカのウイスキー、ふたつの北の自然の恵みを合わせて愉しんでみたいものですね。