from「Jigger & Pony」江口明弘

フロム・ザ・バレルにカモミールが香る「Mrs. Rita」

フロム・ザ・バレルを愛用する世界を代表するバーテンダーに、その魅力や可能性をインタビューするFROM THE BARTENDER。今回お話を伺ったのは、シンガポールの名店「Jigger & Pony」の江口明弘氏。「Jigger & Pony」は、The World’s 50 Best Barsに常に名を連ねる、アジアを代表するバーのひとつ。そのカウンターで腕を振るいながら、同グループのバープログラムダイレクターとしてメニュー開発を牽引し、世界各地でゲストバーテンダーやバーコンサルタントとしても活躍する江口氏に、フロム・ザ・バレルの魅力やカクテルでの活かし方について語っていただきました。

江口明弘

シンガポール Jigger & Pony主宰

20歳で横浜の老舗ジャズカクテルラウンジ「ウインドジャマー」にてキャリアをスタート。2007年にシンガポールへ渡り、複数のバーで経験を積んだのち、2013年「Jigger & Pony」にバーマネージャーとして参画。現在は「Jigger & Pony」を含む同グループの7つの系列店やボトルドカクテル「PONY」のマネジメントを手掛けるほか、世界各地でゲストバーテンダーやバーコンサルタントとしても活躍している。

気づけばそばにあった、
普遍的な存在

フロム・ザ・バレルとの出会いは?

思い返すと、初めて働き始めた横浜の老舗バーのバックバーに並んでいたのが出会いかもしれません。出会ったことを覚えていないくらい気づけばそばにあった、普遍的な存在という印象です。フロム・ザ・バレルって、日本のウイスキーのなかでもいい意味で異質なんです。日本のウイスキーは商品名が漢字で表現されているものが多いですが、英語のラベルに、シルエットだけで分かるアイコニックな形、棚に並んだ時の特有の存在感。高いアルコール度数や力強い味わい。唯一無二の個性があるウイスキーですよね。

江口さん自身は、フロム・ザ・バレルを
どのように飲まれていますか?

僕がフロム・ザ・バレルを飲むときは、ストレートかハイボールのどちらかですね。やっぱりスピリッツって、度数が高いほど香り高くて美味しいんです。フロム・ザ・バレルもかなり度数が高い商品なので、その良さを一番感じるには味も香りも薄まらないストレートがおすすめです。でも、それぞれが自由に美味しく飲むことがなにより大切だと思います。

海外では、ウイスキーはどんな風に
飲まれることが多い印象ですか?

最近は海外で水割りを飲む方が増えています。少し前まではウイスキーを薄めることに否定的な愛好家が多かったのですが、ハイボール文化が広く浸透して、さらに水割り文化が広まりつつあるという印象です。もしフロム・ザ・バレルを水割りで飲むなら、軟水がいいですね。日本のウイスキーは軟水でつくられていますから。「Jigger & Pony」でも、水割りには北海道の超軟水を使っています。

ウイスキーのカクテルではなく、
フロム・ザ・バレルのカクテルを
つくっている

カクテルベースとして、フロム・ザ・バレルと
他のウイスキーをどのように使い分けていますか?

使い分けるのではなく、フロム・ザ・バレルでしか成り立たない組み合わせでカクテルをつくっているというイメージです。カクテルメニューを考える時は、そのスピリッツ自体がもともと持っている香りから想像力を膨らましていくんです。だから、ウイスキーのカクテルをつくっているというよりは、フロム・ザ・バレルのカクテルをつくっているという表現のほうが、僕にとっては適切かもしれません。

江口さんが、フロム・ザ・バレルで初めてつくった
カクテルについて教えてください。

「Mrs. Rita」という、カモミールティーを漬け込んだフロム・ザ・バレルにフレッシュジュースなどを合わせたカクテルです。10年以上前に、ニューヨークの「The Dead Rabbit」に初めて訪れた時につくらせてもらった思い出深い一杯でもあります。「The Dead Rabbit」といえば、当時のThe World's 50 Best Bars で1位を毎年争うような伝説的なバーでした。そのお店に勉強を兼ねて飲みに行ったところ、バーテンダーの方の心遣いで、カウンターでお酒をつくらせてもらえる事になって、その時につくったのがこの「Mrs. Rita」でした。「The Dead Rabbit」は世界中のお酒がバックバーに並んでいるのですが、まだアメリカでは発売前だったフロム・ザ・バレルも当然のようにそこに置かれていました。

Mrs.Rita

Mrs. Rita

カモミールティーを漬け込んでインフュージョンしたフロム・ザ・バレルに、オレンジリキュール、レモンジュース、トンカビーンズを少し加えて仕上げました。カモミールはとても香りが強いので、ほどよく漬け込むようにしています。

Mrs. Ritaはどんな発想から
生まれたのですか?

フロム・ザ・バレルでカクテルをつくってみたいという気持ちがあったんです。クラシックなカクテルのレシピに日本のウイスキーを使うものは存在しないし、使ってもいいという概念がなかった。でもあるとき、The World's 50 Best Barsのイベント会場でニッカカフェグレーンを使ったマンハッタンを飲んで、日本のウイスキーをカクテルで使って良いんだとインスパイアを受けたんです。フロム・ザ・バレルはフラワーな香りが感じられるので、それに合わせるようにカモミールを使いました。そのカモミールに合うようにレモンを加える。そうして、もともとの香りを活かすように素材を重ねていきました。

ぜひ、フロムザバレルを使った
ほかのオリジナルカクテルも
教えてください。

たとえば、今も「Jigger & Pony」 のメニューに載っている「マンハッタン」と「ブールヴァルディエ」がそうですね。カクテルはお酒ですから、お酒の味がしてなんぼだと私は思います。ただ、カクテルにするからには、ストレートで飲んで美味しいものをさらに美味しいと感じてもらえるようにつくりたい。だから僕はベースになっているアルコールの味わいがしっかり感じられつつも、その個性をより引き上げてくれるような素材の組み合わせを大事にしています。

マンハッタン

マンハッタン

フロム・ザ・バレルにカカオを蒸溜してつくったフレーバーを加えると香りが際立ちます。そこにスイートベルモット、チェリーのアペリティフを加えて、一般的なマンハッタンより素材のニュアンスをより強調した「Jigger & Pony」オリジナルの味わいに仕上げています。

ブールヴァルディエ

ブールヴァルディエ

フロム・ザ・バレルに、イタリアンビターリキュール、スイートベルモット、チョコレートビターズを合わせています。ある男性のお客様にウイスキーベースのおすすめをオーダーされてつくったカクテルです。ブールヴァルディエは元々バーボンベースのカクテルで少し甘いお酒なのですが、バーボンの代わりにフロム・ザ・バレルを使うことで力強い味わいに仕上げています。

日本のウイスキーの
入り口のような存在へ

江口さんからみて、
今のカクテルシーンは
どのような
流れにあると感じていますか?

今はクオリティエグゼキューションの時代で、どれだけ全体的な質を高められるかという流れになっていると感じます。10年以上前はユニークな組み合わせこそ正解という流れもありましたが、カクテルに対する新しい技術みたいなものはすでに出尽くして、熱が落ち着いた印象です。実際に今は、味やバランス、テクスチャーや温度、グラスも含めたプレゼンテーションまで、しっかり細部まで気を使った満足度の高いカクテルが、昔よりも多くのバーで楽しめるようになってきていると思います。なおかつカクテルの裾野が広がっているような気もしますよね。

カクテルの裾野が
広がっているというのは?

今は若い方もどんどんカクテルを飲み始めている印象があります。日本でいうと、かつてはバーと聞くと敷居の高さやマナーやルールに厳しい印象があったかもしれませんが、最近は敷居を低くした、カジュアルだけど質の高いカクテルをつくるバーが増えてきました。格式高いバーももちろん素晴らしいですが、より多くの人にカクテルを飲んでもらえるようになって欲しいというのは、我々が目指しているところでもあります。もしかしたら10年後には、若い人が今以上に気軽にバーに訪れて本格的なカクテルを飲むようになっているかもしれませんね。そういう状況になってくれると嬉しいですし、私自身もそういう世界をいつか実現したいなと思います。

江口さんがきっかけとなり広がった
「フロム・ザ・バレル ソープディスペンサー」

個性的なボトルの空き瓶をなにかに使えないかなと考えていて、ハンドソープを入れると面白いと思いついたんです。「Jigger & Pony」ではウイスキーのカクテルを多く提供していますから、お店のトイレに置いて世界観を強固にすることができました。沢山の方に真似していただいて嬉しいですし、こういった多様なきっかけから、カクテルやバーの存在に興味を持ってくれる方が増えてほしいですね。

フロム・ザ・バレル ソープディスペンサー

茶色いハンドソープを入れたフロム・ザ・バレル

最後に、江口さんにとってのフロム・ザ・バレルとは。

フロム・ザ・バレルは、日本のウイスキーの入り口のような存在になり得ると感じています。お客様にはバックバーをのぞかれる方が多いので、お酒の面構えは意外と重要なのですが、この特有の存在感が目を惹きます。小さな瓶にニッカのブレンドの技術とクラフトマンシップが凝縮されていることから、世界中のお客様に日本のウイスキーを紹介するときに安心しておすすめできるボトルです。バーテンダーにとってはカクテルベースとして非常に使いやすく、漢字のないラベルは海外のお客様にとっても手に取りやすい。日本を代表するウイスキーとして、そのアイデンティティーとともに、より大きく世界に旅立っていってほしいです。

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